体調不良は誰にでも起こりうることですが、特に近年はメンタル面の不調を抱える人が増えています。厚生労働省の公式サイトによると、日本人のおよそ30人に1人が心の病気で通院や入院をしているそうです。
もしもいま、うつ病や適応障害などでつらい思いをしている人がいたら、無理をせずに心と身体を休めることが大切です。この記事では、選択肢の1つとして仕事を休職する方法について詳しく解説します。
ただし、手続きをする余裕がないときは、この手順にこだわらなくても構いません。できれば信頼できる人や医療機関にSOSを出したうえで、しっかり休むことを優先してください。
休職後に復職する方法について知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。
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参考復職が不安な人へ|復職の方法やポイント、よくあるトラブルを解説します
復職は、休職から元の職場に戻ることです。心の病気による休職の場合、身体の病気に比べて復職率が低く、退職してしまう人も多いのが特徴です。この記事では、復職の方法4ステップと、成功のポイントや注意点を詳しく解説します。
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こんな方におすすめ
- メンタル面の不調で仕事に行くのがつらい人
- 休職する際に必要な手続きや注意点を知りたい人
今すぐ退職したいなら…
執筆者
やっさん
- 人事・労務歴14年
- 一部上場企業やベンチャー企業など4社で勤務
- 採用面接や給与計算、社会保険手続きなどを担当
- FP2級、ビジネスキャリア検定(人事)3級
休職とは
休職とは、会社員や公務員などが雇用関係を維持したまま、自分の都合で仕事を長期間休むことです。産前・産後休業や育児休業、介護休業などは法律で日数や条件などが定められています。一方で、病気やケガでの休職に法律は無く、企業によってルールが異なるのが現状です。
ちなみに「休職」とよく似た言葉として「欠勤」や「休暇」がありますが、以下のような違いがあります。
【欠勤】労働の義務がある日に休むこと
【休職】長期的に労働の義務が免除されること
【休暇】短期的に労働の義務が免除されること。有給休暇や夏季休暇などのバケーション。
休職する方法3ステップ
ここからは、休職する方法について3ステップで詳しく解説していきます。
- 就業規則を確認する
- 専門機関で診断書を書いてもらう
- 上司や人事に申し出る
就業規則を確認する
休職を考え始めたら、まずは職場の就業規則で休職に関する規則を確認しましょう。
就業規則とは会社の労働条件をまとめたルールブックのことです。常時10人以上の従業員を雇用する事業所では、必ず作成して誰でも閲覧できるようにしておくことが法律で決められています。
多くの企業では、就業規則で休職が認められる条件、期間、休職中の給与のことなどが定められています。以下は休職規定の一例です。
※内容は企業によって違うので、ご自身で確認してください
<休職規定>
第1条 従業員が次のいずれかに該当する場合、休職できる
・身体または精神の疾患により、労務の提供が不可能と会社が判断したとき
・業務命令により他の事業に出向したとき
第2条 休職の期間は以下の通りとする
・勤続1年以上3年未満の者:最長3ヶ月
・勤続3年以上の者:最長6ヶ月
なお、勤続年数が1年未満の者は休職を適用しない
第3条 休職期間中の給与・賞与は支給しない
第4条 休職期間中は勤続年数に通算しない
第5条 休職期間中の社会保険料(本人負担分)は、会社が指定する日までに振り込むものとする
第6条 休職期間中は療養に専念し、会社から連絡があった場合は対応する
第7条 復職する際は、医師による復職可の診断書を提出する
なお、元の職務に復帰させることが困難と会社が判断する場合には、他の職務に就かせることがある
第8条 休職期間が終了しても疾患が治癒せず復職が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする
また、就業規則を確認する際は以下の点に注意しましょう。
- 自分の場合は最長で何ヶ月休職できるのか
- 休職中の給与や社会保険はどうなるのか
- 休職が終わったらどうなるのか(復職や退職のルール)
専門機関で診断書を書いてもらう
病気やケガが原因で休職する場合、ほとんどの企業では医師の診断書の提出を求められます。
皆さんは会社と雇用契約を結んでいるため、本来ならば毎日働く義務があり、自分の都合だけで「明日から〇ヶ月休みます」ということはできません。しかし、診断書を提出することで「働かない」のではなく「働けない」のだということが証明できます。
診断書には基本的に病名や医療機関名が書かれるのですが、休職の際にはいくつか必要な事項があります。例えば「療養が必要な期間」や「療養の方法(入院、通院、自宅療養、時短勤務など)」です。
単に「適応障害」のように病名が書かれただけでは、職場はいつからいつまで、何を配慮すれば良いのか分からないため、最悪の場合休職ができない可能性もあります。企業によって必要な事項が異なるため、診断書を依頼する前に確認しておくことをおすすめします。
上司や人事に申し出る
就業規則の確認と診断書の準備ができたら、正式に会社に申し出ましょう。本来は直属の上司に相談するのが筋ですが、その上司が不調の原因だったり、知識不足で「じゃあ退職するしかないね」と言われてしまったりすることがあります。
上司に相談しにくい場合や、対応に不信感がある場合は、もっと上の立場の管理職や本社の人事などに相談しましょう。
休職する際の注意点
ここからは、休職する際の注意点について解説します。
- 就業規則を理解しておく
- お金のことを考えておく
- 療養に専念する
- 復帰は医師に相談する
就業規則を理解しておく
先ほど「休職する方法3ステップ」でも解説しましたが、就業規則を理解しておくことは大切です。ルールを正しく理解していないと、思わぬ損をする可能性があります。
例えば、自分は1年間休職できると思っていたのに実際は6ヶ月しか権利がなかった場合、気が付いたときには退職するしかない状態になってしまいます。そのようなことがないよう、就業規則は自分の目で確認しておきましょう。
お金のことを考えておく
休職中はほとんどの企業で給与が支払われないうえ、社会保険料は徴収されます。そのため、現在の貯金額や1ヶ月の生活費を計算して、どれくらいなら収入が無くてもやっていけるのか見通しを立てておくことも大切です。
もし、あなたが職場の健康保険に加入しているのなら「傷病手当金」がもらえる可能性が高いので調べてみましょう。
療養に専念する
休職中は、療養に専念することが大切です。おそらく「同僚やお客さんに迷惑をかけてしまった」「みんな怒っているかな」と気になると思いますが、なるべく仕事のことを考えないようにするのが回復への近道です。
LINEやSNS、チャットなどで職場のグループに入っている場合は、周囲のやり取りも気になってしまうと思うので一時的にグループを抜けることも有効です。連絡窓口は上司や人事に一本化してもらい、職場の人間関係とも距離をとりましょう。
復帰は医師に相談する
復帰の時期は自己判断せず、必ず医師に相談してから決めましょう。数週間休むと、心と身体がかなり回復して「もう大丈夫かも!」と思う時期がやってきます。
しかし多くの場合、この段階で医師に相談すると「まだ休みなさい」と言われます。この時点ではダメージが回復しただけで、なぜ病気になるほど頑張ってしまったのか、再発しないためには次からどうすれば良いのかが分かっていないからです。
焦って復帰してもまた休んでしまうことになるので、復帰は医師と相談しながら、段階を追って進めるようにしましょう。
まとめ:限界を迎える前に心と身体をゆっくり休めよう
休職は、欠勤や有休と違ってまとまった期間の労働が免除される制度です。企業によって休職できる期間や条件が違うので、就業規則でしっかり確認してから利用しましょう。
また、休職する際はお金のことを考えておくこと、療養に専念すること、復帰は医師と相談することが大切です。考える余裕がないときは周りの助けも借りながら、しっかり心と身体を休めるようにしましょう。
今すぐ退職したいなら…