

最近は、うつ病や適応障害などでメンタルの調子を崩して退職・転職する方が増えています。
「就職したいけど体調が安定せず、自信がない」
「転職したけど、うまくいかず短期間で辞めてしまった」
とお悩みの方も多いのではないでしょうか。
そんな方におすすめしたいのが、就労移行支援というサービスの利用です。
この記事では、就労移行支援の概要や利用するメリット、手続き方法などを詳しく解説します。
おすすめの就労移行支援事業所も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

こんな方におすすめ
- うつ病や適応障害などで退職・転職する人
- メンタルの不調や発達障害が原因で仕事が長続きしない人
- 自分らしく無理せず働きたい人
就労移行支援なら…
執筆者
やっさん
- 人事・労務歴14年
- 一部上場企業やベンチャー企業など4社で勤務
- 採用面接や給与計算、社会保険手続きなどを担当
- FP2級、ビジネスキャリア検定(人事)3級
就労移行支援とは
就労移行支援は、障害者総合支援法という法律に基づく福祉サービスの1つです。
障害や難病のある方が、一般企業に就職するためのトレーニングを受けたり、就職活動をしたりするのをサポートしてくれます。
いわゆる「作業所」のように長期的に働くための施設ではなく、あくまで就職の準備をするために、一時的に利用するのが特徴です。
履歴書の書き方や面接対策はもちろんのこと、日々の自己管理やビジネススキルなど、あらゆることを教えてもらえます。

就労移行支援のサービス内容
就労移行支援のサービス内容は、大きく分けて4つあります。
- 働くためのトレーニング
- 職場見学や実習
- 就職活動のサポート
- 就職後のサポート

働くためのトレーニング
まずは、基本的なビジネスマナーやコミュニケーションスキルを学びます。
具体的には、正しい言葉遣いや電話対応、パソコンの基本操作、報告・連絡・相談の仕方などです。
また、自分の障害や特性に合わせた自己管理の仕方も学べます。
例えば、集中力が続かない場合の対処法、同時に複数のことをこなすのが苦手な場合の仕事術、などです。
メンタルに不調を抱える方の場合、どうしても日によって体調に波があったり、ストレスをうまくコントロールできなかったりします。
就労移行支援では、このような方が安定して働くための方法を教えてくれます。

職場見学や実習
働くためのトレーニングで基礎が身に付いてきたら、次は職場見学や実習に行きます。
見学・実習先は一般企業が中心で、就労移行支援事業所のスタッフが、あなたのスキルや適性に合う企業を紹介してくれます。
実際に企業で働く人たちと同じ環境で仕事を体験できるため、職場の雰囲気や人間関係なども肌で感じられるのがメリットです。
もちろん、実習前には就労移行支援事業所が企業と利用者の間に入って、得意な作業・不得意な作業、配慮が必要なことなどを打ち合わせしてくれます。
実習後には、良かった点や課題点の振り返りも行うため、その後の就職活動にも大いに役立ちます。

就職活動のサポート
就労移行支援は、就職活動もサポートしてくれます。
具体的には、企業選び、履歴書・エントリシートの書き方、面接対策などです。
特に面接では、自分の強みをどのようにアピールするか、障害特性をどのように伝えるかが重要ですが、そうしたノウハウを教えてもらえます。
また、これは障害のある方に限ったことではありませんが、就職活動中は不採用になって落ち込んだり、モチベーションが下がったりしがちです。
そんなときにも、就労移行支援のスタッフが親身にサポートしてくれるため、挫折することなくゴールを目指せます。

就職後のサポート
就労移行支援を利用すると、就職後も一定期間サポートしてくれます。
例えば、仕事で困っていることはないか、人間関係の悩みはないか、体調や生活リズムは崩れていないか、といったことです。
仮に困っていることがあれば、スタッフに伝えることで企業側と調整してもらえることもあります。

就労移行支援の利用条件
就労移行支援を利用するためには、いくつか条件があります。
- 対象者
- 利用期間
- 利用料金

対象者
就労移行支援を利用できるのは、以下の条件を全て満たす方です。
- 精神障害・知的障害・発達障害・身体障害・難病※1のある方
- 18歳以上65歳未満の方※2
- 一般企業に就職したい方
※1 難病は障害者総合支援法の対象疾病です。
※2 65歳に達する前5年間障害福祉サービスの支給決定を受けていた方で、65歳に達する前日において就労移行支援の支給決定を受けていた方は、当該サービスを引き続き利用できます。また、18歳未満でも自治体の判断によって利用が認められることもあります。

利用期間
利用期間は原則24ヶ月以内、つまり2年以内です。
全員が2年間フルで通うというわけではなく、就職が決まれば卒業となります。
いくつかの就労移行支援事業所を調べてみたところ、平均すると1年程度、どんなに早い人でも3ヶ月ぐらいは通うようです。
あくまで訓練を行う場所なので、よくある「転職エージェント」のように、数週間ですぐに就職が決まることはまずありません。
また、利用回数の制限は無く、通算して24ヶ月になるまで、何度でも通えます。
例えば1回目に10ヶ月間利用して就職し、しばらくして退職してから2回目に利用する場合は、最大で14ヶ月まで通えるという仕組みです。

利用料金
就労移行支援事業所の利用料金は、本人と配偶者(夫や妻)の前年度の所得によって決まります。
詳しい負担額は以下の通りですが、実際のところ約9割の方が無料で利用しているそうです。
区分 | 世帯収入(本人+配偶者) | 負担上限額/月 |
---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 ※1 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)※2 ※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く※3 |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※1 3人世帯で障害基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。
※2 収入が概ね600万円以下の世帯が対象となります。
※3 入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム等利用者は、市民税課税世帯の場合「一般2」となります。
所得については、本人+配偶者のみが対象です。
実家で暮らしている独身の方の場合、親や兄弟などの所得は関係ありません。

就労移行支援を利用するメリット
就労移行支援を利用すると、次のようなメリットがあります。
- 自己理解が深まって自信がつく
- 専門知識を持つスタッフがサポートしてくれる
- 同じ目標を持つ仲間ができる

自己理解が深まって自信がつく
就労移行支援を利用すると、自分自身の特性や強み・弱みに関する理解が深まり、それに基づいた仕事選びができるようになります。
例えば、長時間同じ作業を続けるのが苦手な人が、工場のライン作業のような仕事に就いてしまうと、苦痛を感じたりミスをしたりして、長く続きません。
反対に、接客業のように毎日変化があり、臨機応変に対応していくような仕事に就くと、活躍できることもあります。
就労移行支援事業所ではさまざまな活動や面談を通して、自分の特性を客観的に知れるため、自己理解が深まって自信がつくのがメリットです。

専門知識を持つスタッフがサポートしてくれる
就労移行支援事業所には、障害や就職活動に関する専門知識を持ったスタッフが常駐しているため、一人ひとりに合ったきめ細かなサポートが受けられます。
例えば、一般社会で「朝が弱くて起きられず、遅刻してしまう」と相談すると、「気合が足りない」「甘えている」と言われてしまうこともあるでしょう。
しかし、障害のある方の場合は睡眠が浅かったり、薬の影響で起きられなかったりと、本人の努力の問題ではない事情もあります。
就労移行支援事業所なら、そうした事情も考慮した対処法を教えてくれたり、早起きしなくても大丈夫な仕事を紹介してくれたりします。

同じ目標を持つ仲間ができる
就労移行支援事業所を利用すると、同じ目標を持つ仲間ができることもメリットです。
もちろん、一人ひとりが持つ障害や経歴は違いますが、「働きたい」という想いは共通しています。
就職に対する不安、うまくいかないときの焦りなどを共有し、励まし合える環境はとても心強いものです。
また、就労移行支援事業所にはグループワークや共同作業を通して、コミュニケーションスキルや協調性を身に付けるカリキュラムもあります。
現実問題として、どんな職場でも1人ぐらいは合わない人や苦手な人がいるものです。
そんなときに、具体的にどうやって距離感を保つのか、言いたいことをどう伝えるのかといったことも、仲間と一緒に実践形式で学べます。

就労移行支援事業所を選ぶ際のポイント
一言で就労移行支援事業所といっても、いろいろな施設があります。
ここからは、就労移行支援事業所を選ぶ際のポイントを解説します。
- 通いやすい場所にある
- 自分に合うプログラムがある
- 就職支援の実績がある
- 見学や体験で実際の雰囲気を確かめる

通いやすい場所にある
就労移行支援は基本的に週5日、毎日通うことになります。
(※体調や事情によっては、少ない日数から始めることもあります。)
どれほど魅力的な事業所であっても、通うこと自体が負担になってしまっては続けられないため、通いやすい場所にあることは重要です。
距離や所要時間はもちろんのこと、電車を使う場合は混雑具合も確認が必要です。
あまりに混雑がひどい路線だと、体調が良くない日の負担が大きくなってしまいます。
通いたい事業所が見つかったら、朝の開始時間に合わせて実際に電車に乗ってみましょう。

自分に合うプログラムがある
就労移行支援事業所を選ぶ際は、自分に合うプログラムがあるかどうかを確認することも大切です。
事業所ごとに、さまざまな特色のあるカリキュラムが用意されています。
一例を挙げると、うつ病や発達障害など特定の障害に特化した事業所、簿記やプログラミングなど資格取得を支援してくれる事業所などがあります。
仮に、簿記には興味が無いのに簿記専門の事業所を選んでしまうと、何ヶ月間も簿記の講座を受けることになり、紹介される仕事も経理などの事務職が中心になってしまいます。
自分がやりたいことや身に付けたいことを踏まえて、プログラムをしっかり確認してから選びましょう。

就職支援の実績がある
厚生労働省の資料によれば、就労移行支援事業所は全国に2,823ヶ所もあるそうです(令和7年1月実績)。
この中で質の高いサービスを提供している事業所を選ぶためには、就職支援の実績も1つの指標になります。
多くの就労移行支援事業所が、ホームページ上で「これまでに〇名の就職を支援しました」や「利用者の〇%が就職できました」というように、実績を公開しています。
また、就職後(半年後)に定着できているかどうかを示す「定着率」という指標もあり、全国平均は約60%と言われています。
事業所を選ぶ際は、こうした就職支援の数字も参考にしてみてください。

見学や体験で実際の雰囲気を確かめる
就労移行支援事業所を選ぶ際は、見学や体験に行ってみることも大切です。
ほとんどの事業所が、無料で見学や体験を受け付けています。
実際に自分の目で見ることで、資料やホームページだけでは分からない事業所の環境やプログラムの内容、スタッフの人柄、他の利用者の雰囲気なども把握できます。
また、見学や体験の際には、気になる点があれば遠慮なく質問してみましょう。
例えば「体調不良のときはどうするのか」「昼食はみんなどうしているのか」「今までどんな企業に就職した人がいるのか」といったことです。
回答の内容はもちろんのこと、スタッフが的確に・誠実な姿勢で対応してくれるかどうかも、事業所選びの判断材料になります。

就労移行支援の利用手続き
就労移行支援の利用手続きは以下の通りです。
利用の流れ
- 就労移行支援事業所を探す
就労移行支援事業所を探す自宅から通える範囲の事業所を探しましょう。
「ワムネット」なら、地域名から簡単に検索できます。 - 見学や体験に行き、利用を決める
気になる事業所が見つかったら、必ず自分の目で確認してから利用を決めましょう。 - 障害福祉サービス受給者証を申請する
市区町村の役所にある障害福祉の窓口で、就労移行支援を利用したいことを伝えます。
必要書類に記入して提出して、問題がなければ数週間~2ヶ月程度(※地域や時期による)で障害福祉サービス受給者証が交付されます。 - 就労移行支援事業所と利用契約を結ぶ
障害福祉サービス受給者証が交付されてから、正式に利用契約を結びます。 - 利用を開始する

おすすめの就労移行支援事業所
ここからは、おすすめの就労移行支援事業所を4つ紹介します。

LITALICOワークス
LITALICOワークスは、株式会社LITALICOが運営する就労移行支援サービスです。
全国130ヶ所以上に事業所があり、これまでに累計15,000名以上の就職をサポートしてきた豊富な実績があります。
専門的なアセスメントに基づいて、200以上の独自ブログラムから一人ひとりに合った支援を提供しています。
LITALICOワークスの利用を前提としていなくても、無料で就職相談もできますので、迷っている方はぜひ気軽に相談してみてください。

ココルポート
ココルポートは、株式会社ココルポートが運営する就労移行支援サービスです。
これまでに累計約5,000名、2024年度だけでも893名の方の就職を支援しています。
一人ひとりの悩みに寄り添う支援が特徴で、例えば通所の頻度については週2日半日のみからのスタートも可能です。
また、交通費の補助(月1万円上限)や無料のランチ提供など、経済面のサポートも手厚いのが魅力です(※一部、対象外の事業所もあります)。

atGPジョブトレ
atGPジョブトレは、株式会社ゼネラルパートナーズが運営する就労移行支援サービスです。
atGPジョブトレには、うつ症状コース、発達障害コース、統合失調症コース、聴覚障害コース、難病コースという障害別の5つのコースがあるのが特徴です。
プログラムも障害に応じた内容になっているため、よりきめ細やかなサポートが受けられるうえ、同じ悩みや目標を持つ仲間もできやすくなります。
この他、未経験からWebデザイナーやプログラマーを目指せるITスキルコースもあります。
障害とうまく付き合っていく方法を身に付けたい方におすすめのサービスです。

Neuro Dive
Neuro Diveは、人材大手のパーソルグループであるパーソルチャレンジ株式会社が運営する就労移行支援サービスです。
AIや機械学習、データサイエンスといった最先端の高度なIT技術を身に付けられるのが特徴です。
実際に、卒業生の約8割がエンジニアやマーケティング、データサイエンティストなどの専門職として就職していて、年収アップを実現した方も多くいらっしゃいます。
IT業界やデータ分析に興味がある方にぴったりのサービスです。

まずは就労移行支援事業所を見学してみよう!
就労移行支援は、障害や難病を抱える方が、一般企業に就職して安定して働くことを支援してくれる福祉サービスです。
就労移行支援を利用すると、ビジネススキルだけでなく障害との付き合い方や自己管理の方法も身に付くため、これから自分らしく快適に生きていくのにも役立ちます。
興味がある方は、ぜひ見学や体験に行ってみましょう。
就労移行支援なら…